ダイレクト損保は事故サービス体制を再構築すべき

損害保険ジャパンが事故対応コールセンター「事故サポートデスク」開設すると発表した。

注目ポイントは2つ

1.車両単独事故や100:0対物事故を受付から支払いまで集中化
2.事故受付に加えて、相手方への連絡などの初期対応も24時間365日


1.は現地で対応する必要が少ない簡易事案を集中化し、業務効率を高めるもので、主に「コスト削減」という「会社側のメリット」がある。


では「顧客側のメリット」は何なのだろうか。
まず車両単独や100:0案件という「交渉業務」があまり必要とされないものは、「支払いスピード」が顧客満足において最重視される。
この集中化によって支払いスピードが向上すれば、顧客価値は大きい。

それだけではない。簡易事案を集中化することによって、全国各地にある現地サービスセンターの存在価値をより高めることができる。
現地サービスセンターは、簡易事案の対応をする必要がなくなり、それによって生じた余剰時間を、お互いに過失割合が発生する事故(過失案件)や対人事故などの交渉業務に充てることができる。1件1件をじっくり腰をすえて対応することができるのである。

お互いの言い分が異なることが多い過失案件や、解決まで時間がかかる対人事故においては、「集中化」戦略はなじまないことを損保ジャパンはよくわかっている。
このような事案は、現場確認を行ったり、契約者や被害者面談を行うことが、契約者・被害者双方に安心感・納得感を与え、それが結果的に解決までの日数を短縮する。
このように、現地サービスセンターがより大きな顧客価値を生み出すようになってくるということである。


では、ダイレクト各社はどうだろうか。
ダイレクト自動車保険各社は「集中化によるコスト効率」しか考えていないように見える。
過失案件であっても面談をしない前提で、事故処理拠点を集中化している。
東京や大阪にしか事故処理サービスセンターを設置していないイーデザイン損保などがその典型だ。

2.の「24時間365日の初期対応」という点に関しては、富士火災がもっとも進んだサービスを提供していたが、損保ジャパンもこれに追随したものだ。
富士火災は「ベリエスト」という最上級商品の契約者限定であるが、損保ジャパンは顧客を区別せずに全契約者がこのサービスを利用することができそうだ。

ダイレクトの中には「休日でも平日同様のサービス」などと称し、休日に初期対応をしている会社もあるが「対応は日中だけ」である。
既存損保が「24時間365日の初期対応」を提供し始めると、ダイレクト各社の事故処理サービスに関する優位性は失われたといっても過言ではない。

ダイレクトの自動車保険が日本で誕生してからほぼ10年が経過するが、既存損保が事故対応に力を入れ始めた一方、ダイレクトはロードサービスのスペック競争にとどまり、肝心の事故処理はたいした進化をしていない。

おそらくこのままでは、ダイレクト自動車保険はある程度までは規模の拡大はできるだろうが、どこかの時点で必ず頭打ちになり、ダイレクト各社間でのパイの奪い合いになる時期が来ると考える。
本気で既存国内損保から顧客を奪おうとするなら、「ダイレクト自動車保険=安かろう悪かろう」という棲み分けが定着する前に、顧客価値が高い事故サービス体制を再構築する必要があるだろう。



損保ジャパン、事故対応コールセンター「事故サポートデスク」を新設
(日本経済新聞2009年6月11日)


自動車事故「事故サポートデスク」を新設

全国の自動車事故受付を一元集中化し、車両単独事故などはお支払いまで一貫対応

株式会社損害保険ジャパン(以下「損保ジャパン」、社長 佐藤正敏)は、リテールビジネスモデル革新プロジェクト「PT-R」の一環として、2009年12月(予定)に業界最大規模(東京401、大阪162の計563ブース)の事故対応コールセンター「事故サポートデスク」を新設し、高品質かつ均質な自動車事故対応サービスの提供を開始します。

1.「事故サポートデスク」の特長

(1)全国の自動車事故受付集中化・車両単独事故などのコールセンターによる一貫対応(業界初)
 「事故サポートデスク」では、電話・FAX・インターネット経由で全国のお客さまおよび代理店から事故を一元集中化して受け付けるほか、東京・大阪地区の車両単独事故や相手方に過失がない対物事故などについては、事故受付から請求のご案内、保険金のお支払いまで一貫して対応します。
これにより、一連の業務を分断することなく、これまで以上に迅速に、お客さまにきめ細かなサービスを提供します。

(2)初期対応諸費用に対するキャッシュレス対応
 「事故サポートデスク」で事故を受け付けた際に、提携業者をご案内することで、事故直後に発生する諸費用について、キャッシュレス対応を実現します。
これにより、レッカー費用・タクシー費用・宿泊費用などについては、原則としてお客さまに費用立替のご負担をおかけすることがなくなります。

(3)事故の相手方への即時連絡サービス
 事故の初期対応を充実させ、「事故サポートデスク」で受け付けた事故について、必要に応じて平日の夜間や休日に、事故の相手方への連絡を即時実施するサービスを開始します。
従来の24時間365日の事故受付対応に加え、事故の相手方への連絡を迅速に実施することで、お客さまにいち早く安心をお届けします。


2.国内損保初の新事故受付システムを導入

 「事故サポートデスク」では、先進的かつグローバルスタンダードに即した高度なシステムサービスを実現するために、欧米を中心に数多くの導入実績と成功事例のあるアクセンチュア社の保険金支払業務専用パッケージソフトウェア「The Accenture Claim Components Solution」(以下「CCS」)を国内損害保険会社として初めて導入しました。

 CCSを中心としたシステムにより、事故の発生状況を伺うだけでお客さまに自動的にお支払いの可能性がある保険金種類を事故受付時にご案内できるようになるほか、オペレーターとお客さまの会話内容に応じてシステム画面を順次更新するサポート機能により、オペレーターの経験年月に関係なく、最適な事故対応が可能となります。
 また、CCSはオペレーター業務の支援や事務処理の進捗管理などに充実した機能を持つため、オペレーター教育にかかる時間や「事故サポートデスク」の運営コストの削減が可能となります。


3.今後の展開

 損保ジャパンでは、2011年7月までに「事故サポートデスク」を900ブースの規模に拡充し、全国の車両単独事故や相手方に過失がない対物事故などのお支払いまでを一貫して実施する体制とする予定です。
 すべての価値判断をお客さま視点に基づいて行い、お客さまから選ばれ続ける会社を目指して、損保ジャパンは新しいビジネスモデルの構築に引き続き取り組んでいきます。

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