三井ダイレクトがドライバー保険発売

三井ダイレクトがドライバー保険を発売すると発表した。

ドライバー保険とは、簡単に言えば「免許は持っているが、自分の車を持っていない人」が他人の車を運転して事故を起こした場合に備える保険である。
(「他人の車」には家族(本人・配偶者・同居の親族が所有する車は含まれない点は要注意である。)

さっそく、三井ダイレクトのドライバー保険の「特長」をチェックしてみる。

【三井ダイレクトのドライバー保険の補償内容】
■基本補償

・借用自動車運転中の対人・対物賠償(示談交渉つき)
・自転車運転中の対人・対物賠償(示談交渉つき)

■オプション(任意で選択可能)
・3つの傷害保険(搭乗者傷害危険担保特約、人身傷害補償特約、自損事故傷害保険)を選択可

・他車との事故により対物賠償保険金が支払われる場合は、借用自動車の車両損害についての臨時費用をお支払いする車両損害臨時費用担保特約(5万円)も選択可

目新しいところとしては、「自転車運転中の賠償事故」を補償することと、借りた車を事故(車同士の事故に限る)で破損させた場合に、5万円を臨時費用として支払う特約がある。

【評価】
まず、「自転車運転中の賠償事故」を補償する保険というのは、一般的には「個人賠償責任保険」の範疇だと思う。

三井ダイレクトの「ドライバー保険」では「自転車事故に限定」しているところが要注意事項である。
一般的な個人賠償責任保険なら、自転車事故だけでなく、日常生活での賠償事故(たとえば、スキー場で他人をケガをさせた場合など)でも保障の対象になる。しかし、これをあえて「自転車事故に限定」するくらいなら、「自転車保険」を発売するほうがよっぽど気が利いていると思う。
保険料を安く見せるために、補償を薄くするというのがこれまでの三井ダイレクトの常套手段であるが、
補償を薄くする場所を間違っているような気がする。


次に「借りた車の損害に対し5万円の臨時費用」というのも、借りた車を事故で壊して、5万円ではどれだけ役に立つのか疑問である。しかも、車同士の事故しか支払われないということだと、借りた車をちょっとこすってしまった場合などは1円も支払われない。


「特長」として掲げている2つを見ると、いかにも「薄い補償を、安い保険料で」という三井ダイレクトのマーケティング戦略を象徴していると感じる。

この三井ダイレクトのドライバー保険の発売経緯についてサイトを見ると、
「他人の自動車やレンタカーを利用する際のリスクに備えるドライバー保険のより一層の普及の必要性に加えて、急増する自転車事故における相手方への賠償の備えとしてのニーズの高まりからこの商品を開発・発売することとなりました。」とある。これについてもコメントしてみる。


まず、「レンタカーを利用する際のリスクに備える」とあるが、普通のレンタカーには、対人・対物や搭乗者傷害がカバーされる自動車保険がついており、ドライバー保険は一般的には必要ない。
それよりも、レンタカーでは、事故を起こした場合にレンタカー会社から請求される「ノンオペレーションチャージ」と呼ばれるペナルティ(5万円~12万円前後)のほうが痛い。

また、「他人の自動を利用する」とあるが、三井ダイレクトのドライバー保険に加入しても、借りた車を壊した場合、5万円(しかも車同士の事故のみ対象)しか支払われない。

ドライバー保険を自ら加入しようと思う人にとっては、「借りた車を壊してしまった場合の補償」が重要なのではないだろうか?(対人・対物は当然として)
さらに、借りた車の保険を使った場合に、その車の自動車保険の等級をダウンさせてしまう(=車の持ち主の保険料アップ)ことを考えると、ドライバー保険に入ったからといって、安心して他人の車を運転できるとはいえない。車の持ち主に迷惑を掛けると、後々の人間関係にも影響が出かねない。


古くからある「ドライバー保険」を、ダイレクト系の損保がインターネット専用商品として発売するからには、もっと消費者のニーズを捉えた画期的な商品として発売して欲しかった。

ダイレクト系売上1位のソニー損保が目新しい顧客サービスや補償を出してこなくなり、ある意味「普通の保険会社」となってきている現在、業績を急激に伸ばしている三井ダイレクトの動向に個人的に注目していただけにちょっと残念である。

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